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お口の豆知識 TRIVIA

ベビーフードの離乳食でも顎の発達は促せる、月齢表示に頼らない硬さの見極め

ベビーフードの離乳食でも顎の発達は促せる、月齢表示に頼らない硬さの見極め

市販の離乳食を活用しながら噛む経験を育む考え方


市販のベビーフードを取り入れながらでも、お子さんの食べ方や姿勢に合わせた与え方を工夫することで、顎の発達や噛む経験を促すことは可能です。


この記事では、商品にある月齢の表示だけにたよらず、舌や歯ぐきの動きから、かたさや粒の大きさを見きわめるポイントをまとめました。むせたり吐き出したりするときの直し方や、歯科医院・小児科へ相談するめやすもあわせて紹介します。


この記事の要点まとめ


  • 月齢の表示はめやすとし、舌や歯ぐきの動きや食べ方を見ながら、かたさや粒の大きさを変えていきます。
  • むせや吐き出し、ため込みが見られたら形状や一口量を見直し、姿勢やスプーンの使い方も確認します。
  • 食べにくさが続く場合は日頃の様子を記録し、歯科医院や小児科へ相談します。

ベビーフードを使った離乳食で顎の発達を促すには、硬さより先に食べ方を見る

ベビーフードを使った離乳食で顎の発達を促すには、硬さより先に食べ方を見る

硬さを変える前に、食べ方と与え方を一緒に見る


離乳食で顎の発達を促すには、食材の硬さを上げる前に、まずお子さんの食べ方と大人の与え方を一緒に確認することが基本となります。粒を口から出したりむせたりする原因は、食べ物の硬さだけでなく、スプーンを入れる位置や食事中の姿勢、お口の運動機能など複数の要因が関わっているためです。


当院では、0歳の歯が生える前からミルクや母乳の飲み方、食事中の体勢、スプーンの使い方に着目しており、離乳食が始まった後も与え方を確認しています。商品を次の段階へ替える前に、まずは現在の与え方を見直すことから始めていきましょう。


月齢表示は目安にして、舌や歯ぐきでつぶせているかを確かめる


ベビーフードの月齢表示はあくまで目安にとどめ、お子さんが実際に舌や歯ぐきでつぶせているかをお口の動きと照らし合わせて判断します。離乳食は、生後5〜6か月頃になめらかにすりつぶしたおかゆをひとさじから始め、少しずつ量を増やします1。その後は、お子さんのお口の動きを見ながら、舌でつぶせる硬さ、歯ぐきでつぶせる硬さへと少しずつ進めていきます。


ただし、月齢表示どおりの硬さが、いまのお子さんのお口の動きに合うとは限りません。あげる前に保護者の指で軽くつぶせるか、粒の大きさがそろっているかを確かめてください。早産のお子さんや乳歯の生え方に個人差がある場合は、月齢どおりに進めず、お口の発達段階に合わせることが大切です。


月齢の目安形状と硬さの目安食べているときのお口の観察点
生後5〜6か月頃なめらかなペースト状唇を閉じてごっくんと飲み込めているか
生後7〜8か月頃舌でつぶせる硬さ(豆腐くらい)舌を上下に動かし、上あごに押しつぶしているか
生後9〜11か月頃歯ぐきでつぶせる硬さ(完熟バナナくらい)口角が左右に動き、歯ぐきでもぐもぐしているか

粒を出す・むせる・ため込むときは、ひとつ前の硬さに戻して様子を見る


月齢表示に合わせてステップアップした際に、粒を口から出す、むせる、口にため込むといった様子が見られたら、ひとつ前の硬さや形状に戻して様子を見ます。吐き出しは食感への不慣れや、粒の大きさ・硬さが現在のお口の動きに合っていないサインであることが多いからです。


無理に硬いものを与え続けず、お皿の上でスプーンの背を使って粒を軽くつぶす、一口の量を減らす、とろみをつけるなど、ご家族が同じ方法で行える調整を取り入れましょう。手づかみ食べを始める時期は、丸くて硬い形状や弾力の強い食材を避け、必ず大人がそばで見守ってください。


むせが激しく続く、顔色が変わる、声が出ないなど窒息が疑われるときは、すぐに食事をやめ、ためらわずに119番通報してください。窒息の様子はないものの、むせることが続くときは、小児科へご相談ください。


家族で共有するのは、硬さだけでなくスプーン・姿勢・大きさ


見守る家族で伝え合いたいのは、食べ物のかたさだけでなく、スプーンの運び方やすわる姿勢、ひと口の大きさです。当院の食育指導では、栄養や食材だけでなく、授乳や離乳食のあげ方、スプーンの使い方、食べ物の大きさ、食べるときの姿勢、いすの選び方、食事の時間まで扱っております。


市販品の選択だけで解決しようとせず、食卓全体の環境を整える視点をご家族でそろえておくと、誰が食事を担当しても同じように対応しやすくなります。


  • スプーンの使い方:お口の奥まで入れず、下唇に添えてお子さんが上唇で取り込むのを待つ
  • 食事中の姿勢と椅子:足の裏がステップや床にしっかりつき、首と背筋を伸ばして座れる椅子を選ぶ
  • 一口の大きさとペース:お口の中で処理できる一口量にし、飲み込んだことを確認してから次を運ぶ

ポイント

ベビーフードの硬さを上げる前に、スプーンを下唇で待つ与え方や足の裏がつく姿勢をご家族で共有し、お子さんの唇や舌の動きを引き出しましょう。


離乳食の食べにくさが続くときの相談の目安と、1歳頃への見通し


食べ方を相談するときに伝えたい日常の様子


形状や姿勢を調整しても食べにくそうな様子が続くときは、日常の食事風景を具体的に記録して歯科医院や小児科へ相談してください。お子さんの食べにくさには、お口周りの筋肉や舌の動き、感覚の過敏さ、全身の姿勢など複数の要素が関係していることがあります。


当院では口腔機能の相談目安を、普段お口が開いている様子だけでなく、食事の速さ、食事中の音、丸飲み、唇や舌の癖など日常で観察できる行動で示しております。受診の際は「どの形状でむせたか」「食事にかかる時間」「飲み込めずため込む頻度」「普段からお口がぽかんと開いているか」などをメモして伝えると確認がスムーズです。


なお、病気の診断がつかない子育てや食事の相談、予防のためのアドバイスは、保険が使えないことがあります。口腔機能発達不全症と診断され、決まった条件にあてはまるときは保険の対象になります。


費用や保険が使えるかどうかは、かかる医院で確かめてください。体重の増え方や水分のとり方が心配なときは、小児科に相談できます。


1歳頃に向けて、噛む経験と食事内容の両方を見る


離乳食後期から1歳頃に向けては、顎のために硬さだけを追求するのではなく、噛む経験と食事内容のバランスを両方見ていくことが大切です。当院では1歳頃、食べ物や好みの変化を踏まえて栄養の偏りと食べ方の両方に着目し、食べ方がお口周りや顎の筋肉の発達に関わるという考えから総合的に支援しております。


軟らかいものばかりに偏って噛む機会が減らないよう、前歯でかじり取る経験や奥の歯ぐきでつぶす経験を少しずつ増やしていきましょう。ベビーフードを中心に使う日は、主食・主菜・野菜がそろうように商品を組み合わせたり、豆腐や軟らかく煮た野菜を足したりすると栄養の偏りを防ぎやすくなります。食物アレルギーがある場合は、必ず商品の原材料表示を確認し、かかりつけ医の指示に従って進めてください。


歯が生える前から、毎日の食べ方を相談できる


お口や顎の発達に関する気がかりは、乳歯が生えそろう前や歯が生える前の段階から歯科医院で相談できます。当院では、授乳、スプーンの使い方、食事の姿勢といった小さな所作も毎日重なるため顎の成長に関わると捉えており、歯が生える前の相談にも対応しております。


離乳食を毎食手作りに切り替える必要はありません。市販のベビーフードを上手に活用しながら、毎日の姿勢やスプーンの運び方を見直すことが、お子さんの食べる力を育む土台になります。


なお、与え方の工夫やトレーニングは、食べる・話すといったお口の働きを育てるためのもので、歯並びを整えることを目的としたものではありません。食べ方はお口周りや顎の筋肉の発達に関わりますが、与え方の工夫だけで将来の歯並びが決まるわけではありません。お口の体操や器具を用いる場合は、お子さんが嫌がって一時的に食事のペースが乱れるといった注意点もあります。


当院では駐車場を20台完備しており、保育士による託児やベビー休憩室も備えています。小さなお子さま連れでの来院時に負担が少なくなるよう配慮しておりますので、保護者の方ご自身の定期受診の際に、お子さんの毎日の食べ方についてもあわせてお気軽にご相談ください。


ポイント

丸飲みやため込みなどの気になる様子が続く場合は、日常の食事風景をメモし、歯が生える前や乳歯が少ない時期でも遠慮なく歯科医院へご相談ください。


よくある質問


Q. 子どもが離乳食をあまり噛まずに丸飲みしてしまいます。対策はありますか?


A. まずは食材が小さすぎないか、お茶や水で流し込んでいないかを確認しましょう。細かく刻みすぎると噛まずに飲み込みやすくなるため、指で軽くつぶせる硬さを保ちつつ、前歯でかじり取れる大きさや、歯ぐきの上に乗りやすい大きさに調整します。スプーンをお口の奥に入れず、下唇で待って一口量を自分で取り込ませることも丸飲みの予防につながります。


Q. 食べるのが遅い、または口にため込んで飲み込めないときはどうすればよいですか?


A. 一口の量が多すぎるか、硬さや繊維質がお子さんの噛む力に合っていない可能性があります。まずは硬さを一段階前の状態に戻し、とろみをつけてまとまりやすくしてみてください。足の裏がしっかりつく姿勢で座れているかも確認し、それでも飲み込みにくさやむせが続く場合は、歯科医院や小児科へご相談ください。


Q. 赤ちゃんのお口が普段からぽかんと開いている気がします。食事と関係ありますか?


A. お口を閉じる唇の力や舌の位置は、食べ物を取り込んで飲み込む働きと深く関わっています。離乳食を与える際に、スプーンを上あごにこすりつけず、お子さんが自分の上唇を使って食べ物を取り込む動きを繰り返すことが、唇を閉じる力を育てる練習になります。鼻づまりがある場合は耳鼻咽喉科での確認も検討しましょう。


参考文献


当院では、お座りが安定してきた頃を離乳食開始のサインとし、栄養摂取だけでなく「くわえる・かじりとる・潰す」といったお口の力を育てる訓練として説明しています。歯がない時期は浅いスプーンや昆布・野菜で口を閉じる練習を、前歯が生えたらさつまいもで舌の運動を促すようお伝えし、硬さよりもお口に入らないくらいの大きさを意識することをご案内しています。


1. 離乳の進め方/京丹後市. https://www.city.kyotango.lg.jp/top/soshiki/kodomo/kosodatesien/rinyusyoku/11312.html

2. Ergović Ravančić M, Obradović V, Škrabal S. From Feeding Difficulties to Nutritional Risk in Children with Down Syndrome. Nutrients. 2026. PMID: 42884745. DOI: 10.3390/nu18193295


浅井佑介

歯科医師


浅井歯科医院

院長

浅井佑介

▶ 監修者プロフィール

経歴
2002年
新潟県立新津高校卒業
2008年
明海大学歯学部歯学科卒業
明海大学付属明海大学病院 歯科医師臨床研修(〜2009年)
2009年
明海大学歯学部 オーラルリハビリテーション学分野入局 PDI診療センター勤務(〜2013年)
2013年
新潟大学大学院医歯学総合研究科 組織再建口腔外科学分野入局(〜2017年)
2015年
富山県立中央病院歯科・口腔外科勤務(〜2016年)
2017年
新潟大学大学院医歯学総合研究科修了(歯学博士学位取得)浅井歯科医院勤務
資格・所属学会
2010年
(4月1日)日本顎咬合学会入会
2010年
(6月23日)日本口腔インプラント学会入会