
「お口を閉じて」を毎食伝えている保護者の方へ
診療室でよく伺うのが、クチャクチャ音や丸呑みを何度伝えても変わらない、というお悩みです。食べ方の癖の裏側には、しつけ以上に噛む力や舌の動き、座り方や呼吸の状態が関わっている場合があります。この記事では、家庭で数日かけて見られるチェック項目と、相談を考える目安を整理しました。
この記事の要点まとめ
- 食べ方の癖は、お口の筋力や姿勢、呼吸の使い方が関係していることがあります。
- 足の裏を床につける座り方や食材の形状を工夫することで、噛む動作を支えられます。
- 気になる様子が続く際は、お口の機能の成長について歯科医院へ相談が可能です。
食事の乱れはしつけだけが原因ではない?よくある誤解と口の機能
クチャクチャ音や丸呑みが起きる顎の筋力と舌の働きの関係
噛むという動作は、唇を閉じて口の中をふさぎ、舌で食べ物を奥歯へ運び、頬と顎が連動して押しつぶす、という流れで成り立っています。唇を閉じる力がまだ育っていなければ、口を開けたまま噛むことになり、音が漏れやすくなります。舌が低い位置にとどまっている場合は、食べ物を奥歯へ送りづらく、噛む回数が少ないまま飲み込む形になりがちです。クチャクチャ音や丸呑みは、行儀の問題ではなく口の使い方という視点で整理できる場合があります。 硬いおかずを残すのも、好き嫌いではなく噛みにくさの表れかもしれません。
食べるのが遅い・飲み込めない状態に隠れた口呼吸や鼻づまりの影響
食事中は鼻で呼吸し、飲み込む瞬間だけ息を止めています。鼻づまりや口呼吸の癖があると、この切り替えがうまく進みにくくなります。噛んでいる途中で息継ぎのために口を開けたり、口の中にため込んだまま時間が過ぎたり。「噛むのが遅い」「なかなか飲み込まない」と感じる背景に、呼吸の使い方が関わっていることは珍しくありません。水やお茶で流し込む習慣も、噛む負担を減らすための代償として出てくる場合があります。アレルギー性鼻炎などが関わっていそうなときは、耳鼻いんこう科での確認も並行して検討しましょう。
家庭でできる子どもの食べ方と姿勢のセルフ確認リスト

お口ポカンや舌の癖を見極める口腔機能セルフチェック項目
食卓での様子は、数日続けて眺めると傾向がつかめます。次の項目で当てはまるものを数えてみてください。
- テレビや遊びに集中しているときに唇が開いている(いわゆる口ポカン)
- 食事中に音が出る、口を開けたまま噛んでいる
- 飲み込むときに舌が前に出る、または顎が持ち上がる
- 一口量が多く、食べこぼしが目立つ
- 水分で流し込む、口の中にため込んで時間がかかる
- コップで飲むときに舌が前へ出て、こぼれやすい
3つ以上が1週間以上続いているなら、口の機能の発達という視点で一度整理してみる価値があります。
足の裏が浮いていないか確認する食事姿勢と座り方の確認ポイント
噛む力は下半身の支えとも連動しています。足が床や足置きに届かず、ぶらぶらしたままでは顎に力を入れづらくなります。
- 足の裏全体が床か足置きに接している
- 骨盤が立ち、背中が丸まりすぎていない
- テーブルの高さがおへそとみぞおちの間にある
- 肘が自然に曲がり、無理なく皿に手が届く
- 座面が深すぎず、膝が90度前後に曲がっている
食事の後半だけ姿勢が崩れる子どももいます。食べ始めと終わり、両方の様子を見ておくと判断しやすくなります。
噛む力を引き出すために家庭ですぐ取り組める食事環境の工夫
椅子と足置きの調整で踏ん張る力を生み出すセッティング方法
まず整えたいのは足元です。大人用の椅子を使っているなら、牛乳パックを束ねた台や小さな踏み台を置き、足の裏がぴったり接する高さに合わせます。座面が深すぎるときは背中側にクッションを入れ、膝が直角に近づくよう調整しましょう。足元が支えられると顎に力が伝わりやすくなり、噛む動作を続けやすくなると考えられています。 テーブルは胸の下あたりに来る高さが一つの目安です。身長は数か月で変わるので、季節の節目ごとに見直すと無理のない姿勢を保ちやすくなります。
コップ飲みや食材の大きさを工夫して唇と舌の協調を促すコツ
ストローに頼る場面が多いと、唇と舌を連動させて飲む機会が減っていきます。小さめのコップで少量から練習し、飲むときに舌が前へ出ていないか横から観察してみてください。食材は、あえて前歯でかじり取れる大きさを用意すると一口量の学習につながります。きゅうりのスティック、大きめに切った肉、りんごの薄いくし切りなどが取り入れやすいところ。硬さを上げるより、噛みごたえと形を組み合わせる発想が役立ちます。当院では管理栄養士による食育指導も行っており、ご家庭の献立に沿った具体的な工夫をお伝えしています。
将来の歯並びと顎の発達を守る受診の目安と歯科医院の選び方

癖を放置するとどうなる?口腔機能発達不全症を疑う受診の判断基準
口が開いたままの状態や舌の位置の癖が続くと、歯に加わる力のバランスが変わり、歯並びや顎の成長に影響する可能性が指摘されています。歯科には、噛む・飲み込む・話すといった働きが年齢相応に育っていない状態を口腔機能発達不全症として評価する枠組みがあり、保険で対応できる項目もあります。健診でむし歯を指摘されていなくても、機能面はまた別の観点です。食べ方の相談だけで来院される保護者の方も少なくありません。
新潟県で子どもの口の機能測定や噛み方の相談ができる歯科医院の視点
相談先を選ぶときは、むし歯の処置に加えて、唇を閉じる力の測定や舌の動きの評価、トレーニング(MFT)に対応しているかを確かめておくと話が進めやすくなります。五泉市の当院では小児歯科の診療の中で、口唇閉鎖力を測る「りっぷるくん」や歯科用CTを用いた評価を取り入れています。まずは1週間、食卓で気づいたことをメモしてみてください。前項のチェックで気になる項目が続くようなら、次の健診やフッ素塗布の機会に合わせてお聞かせいただければ、成長段階に応じた進め方を一緒に考えていけます。
よくある質問
Q. 子どもに栄養不足のサインはありますか?
A. 身長や体重の伸びが停滞する、疲れやすい、爪が割れやすい、口角が荒れるといった変化が目安として挙げられます。ただし一つの所見だけで判断するのは難しく、母子健康手帳の成長曲線の流れを追うことが手がかりになります。噛みにくさから食事量が減っているケースもあるため、気になるときは小児科と歯科の両面から相談してみてください。
Q. 栄養が足りているかを家庭で確認する方法はありますか?
A. 1週間ほど食事記録をつけ、主食・主菜・副菜がそろった食事が1日何回あるかを数えると傾向が見えてきます。炭水化物・たんぱく質・野菜類といった品目別のチェックリストを冷蔵庫に貼り、食べた食材に印をつける方法も続けやすいでしょう。まとめ茹でやベビーフードを活用して記録の負担を減らす工夫も現実的です。
Q. 1歳のアレルギーチェックはどのように進めますか?
A. 初めての食材は少量から、単品で、医療機関を受診しやすい平日の午前中に試すのが一般的な進め方とされています。保育園入園に向けた食材チェックリストを使って食べた日付を記録しておくと、園への提出時にも役立ちます。気になる症状が出たときは、自己判断せず医師に相談してください。
Q. 2歳でもお口ポカンのトレーニングはできますか?
A. この年齢では課題として教えるより、遊びの中に混ぜてしまう方が続きやすい傾向があります。シャボン玉やラッパ、ストローで紙片を吹く遊びなどは、唇を閉じる力や息の使い方に関わる動きを含んでいます。年齢に応じた内容は、歯科で口の状態を確認しながらご提案しています。
Q. 鼻づまりがあるときは歯科と耳鼻いんこう科のどちらに行くとよいですか?
A. 鼻の通りが常に悪い場合は、まず耳鼻いんこう科で原因を確認する流れが向いています。そのうえで、唇や舌の使い方の癖が残っているかを歯科で評価すると、両面から整理しやすくなります。順序に迷うときは、受診時にご相談ください。
新潟県立新津高校卒業
2008年
明海大学歯学部歯学科卒業
明海大学付属明海大学病院 歯科医師臨床研修(〜2009年)
2009年
明海大学歯学部 オーラルリハビリテーション学分野入局 PDI診療センター勤務(〜2013年)
2013年
新潟大学大学院医歯学総合研究科 組織再建口腔外科学分野入局(〜2017年)
2015年
富山県立中央病院歯科・口腔外科勤務(〜2016年)
2017年
新潟大学大学院医歯学総合研究科修了(歯学博士学位取得)浅井歯科医院勤務
(4月1日)日本顎咬合学会入会
2010年
(6月23日)日本口腔インプラント学会入会






