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お口の豆知識 TRIVIA

小児矯正の後戻りは「舌の癖」も原因に!保定と口の使い方の見直し方

小児矯正の後戻りは「舌の癖」も原因に!保定と口の使い方の見直し方

お子さんの歯並びの変化に気づいたとき、最初に見直したい視点


小児矯正のあとの歯並びの変化には、舌の癖や口呼吸といったお口の働きだけでなく、保定装置の使い方や顎の成長・歯の生え替わりもいっしょに関わります。 そのため一つの原因に決めつけず、ふだんの様子と装置の使い方をまとめて、歯科医院で見てもらうことが最初の一歩です。この記事では、家でも気づけるサインと歯科の検査のちがい、対応の選び方をお伝えします。


この記事の要点まとめ


  • 後戻りには、保定装置の使い方、顎の成長や生え替わり、舌癖や口呼吸など複数の要因が関わることがあります。
  • 装置の装着時間や口の様子を記録し、保定装置を持参して歯科医院で歯並びや噛み合わせを診てもらいましょう。
  • 状態に応じて装置の調整、口腔筋機能療法、追加矯正を検討し、鼻づまりが続く場合は耳鼻咽喉科にも相談できます。

小児矯正の後戻りの原因を口腔機能だけに決めつけない整理の仕方

小児矯正の後戻りの原因を口腔機能だけに決めつけない整理の仕方

小児矯正の一区切りがついた後に前歯の隙間などが気になり始めた場合、「保定装置」「成長・生え替わり」「口腔機能」の3つの方向から原因を整理します。歯並びを整える前に、なぜ変化が起きたのかという背景そのものに目を向けることが、無理のない方針選びにつながります。


歯が骨の中で落ち着くまでの保定期間と、装着時間・装置の合い具合


矯正装置で歯を動かし終えたばかりのころは、歯がまだ骨の中でしっかり落ち着いておらず、元の位置へ戻ろうとする力が働きます1。この期間に歯並びを保つのがリテーナー(保定装置)です2。


保定がうまくいくかどうかは、お子さん一人ひとりの特徴や装置の種類、着け方によって変わります。取り外し式の装置は装着時間が家庭任せになりやすく、平日の送迎や習い事など生活リズムの変化で使用が途切れることも珍しくありません。また、装置がこわれたり変形したり、顎の成長で合わなくなったりすることも、歯並びを保ちにくくする原因になることがあります。


装着時間を家庭だけで把握するのは難しいことが多く、センサーで装着時間を記録できる保定装置も検討されています。保護者の方が「管理が足りなかった」とご自身を責めるより、まずは1週間の装着時間を家族でメモして共有し、相談の材料にすることから始めてみてください。


生え替わりや顎の成長による変化と後戻りの見分け方


小学校高学年は永久歯の生え替わりや顎の成長が続く時期であり、見た目の変化がすべて後戻りとは限りません。


前歯の隙間が一時的な生え替わりの影響なのか、保定が保てていないサインなのかは家庭では判断しにくい部分です。歯科医院では、隙間が広がり続けているか、前歯が前へ傾いていないか、上下の噛み合わせにずれが生じていないかなどを確認し、経過観察でよい状態か対応が必要かを見極めます。


舌を前に押し出す飲み込み方や口呼吸が前歯に力をかける仕組み


保定装置を外している時間帯に、飲み込むたび舌が前歯を押す癖(舌癖)や、口がぽかんと開いたままの口呼吸、唇を閉じる力の弱さがあると、前歯を外側へ押す力として働き続けます。前歯が上下でかみ合わない開咬の治療では、装置と短い口まわりのトレーニングを組み合わせると、舌の圧力の変化が噛み合わせの改善と関わることがあります。お口周りの筋肉や舌の働きは、歯並びを考えるうえで無視できません。


ただし、口腔機能は後戻りに関わる要因の一つであり、これだけが単独の原因と断定することはできません。「口を閉じて」と注意し続ければ改善するというものではなく、鼻づまりや食事中の姿勢など、お子さん本人の努力だけでは変えにくい背景が隠れていることもあります。呼吸と噛む力は全身のバランスとも関わるため、子どもの姿勢と成長に関する情報サイトもあわせて参考にしてみてください。


家庭で気づける様子と、歯科で行う検査の違い


家庭での観察は「診断」ではなく、受診時に日々の様子を伝えるための大切な手がかりになります。数日間、次のような様子がないか見守ってみてください。


  • 宿題や動画に集中しているときに口がぽかんと開いている
  • 飲み込むときに舌が前歯の間から見える、または唇を噛む癖がある
  • 食事中にクチャクチャと音が出る、あまり噛まずに飲み込む、食べるのが極端に遅い
  • 寝ているときの口呼吸や、日中の鼻づまりが目立つ

一方、歯科医院ではお口や顔の写真をとり、レントゲンや歯科用CT、噛み合わせのチェックを行います。3D口腔内スキャナーで歯並びを立体的に記録し、前とあとの変わり方を見くらべることもできます。唇を閉じる力をはかる器械(りっぷるくん)では、その力を数字で確かめられます。


ポイント

歯並びの変化には、装置が合っているか、どのくらい着けているか、成長による生え替わり、舌や呼吸の癖など、いくつもの原因が重なります。家での様子のメモと装置を持って歯科医院へ行き、検査で今の状態を見てもらうことが大切です。


保定装置の調整・口腔機能への対応・追加の矯正、それぞれの役割と相談の進め方


歯並びの変化への対応は、原因と程度に応じて「保定装置の調整・作り直し」「口腔機能への対応」「追加の矯正治療」から検討します。それぞれの役割と限界を知っておくと、ご家庭の生活リズムに合った方針を選びやすくなります。


対応の選択肢主な対象となる状態役割と限界・注意点
保定装置の調整・作り直し歯の移動がわずか・装置のゆるみや破損がある現状の歯並びを保つのが目的。大きく動いた歯を元の位置へ戻すことは難しい
口腔筋機能療法(MFT)舌の癖・口呼吸・飲み込み方の癖がある口周りの筋肉や舌の正しい位置を練習する。訓練だけで動いた歯を直接並べることはできない
追加の矯正治療(再矯正等)歯の移動が大きい・噛み合わせが変化している装置で歯を動かす。顎の成長段階(I期・II期)に応じた計画と費用・通院が必要

保定装置の確認・調整や作り直しで対応を考えやすいケース


装着時間の不足や装置の不適合・破損が主な要因と考えられ、歯の移動がわずかな段階では、まず治療を受けた歯科医院で保定装置の適合確認や調整、作り直しを相談するのが基本です2。


装置を紛失・破損した際は、自己判断で装着を中止したり、変形した装置を無理にはめたりせず、早めに歯科医院へ連絡してください。一方、歯の移動が大きい場合や噛み合わせまで変わっている場合は、保定装置だけでは対応できず追加の矯正を含めた検討が必要になることもあり、その判断は検査結果に基づいて行われます。


口腔筋機能療法(MFT)が検討される場面と、家庭での練習の負担


舌の位置や飲み込み方、唇の閉じ方、口呼吸の傾向が歯並びの変化に関わっていると考えられる場合、口腔筋機能療法(MFT)が選択肢になります。装置による治療に短い機能訓練を組み合わせると、舌の圧力に変化がみられることがあります。ただし、機能訓練だけで動いてしまった歯を元の位置へ戻せるわけではなく、保定装置や取り外し式の矯正装置と併用を検討する場面も少なくありません。


家庭での練習は、鼻呼吸や正しい飲み込み方を目指すアクティビティを毎日短時間ずつ続ける形が一般的です。保護者の方やご家族が「練習したの?」「また口が開いているよ」と注意役になりすぎると、お互いに負担になります。遊びの要素を取り入れたり、食事の椅子の高さを調整して足裏が床につく姿勢を整えたりと、環境面から支える工夫が続けやすさにつながります。


鼻づまりや口呼吸が続く場合は耳鼻咽喉科とあわせて相談を


アレルギー性鼻炎や扁桃・アデノイドの肥大などで鼻の通りが悪い場合、鼻呼吸の練習や口を閉じる意識づけだけをお子さん本人に求めても、息苦しさから負担になりやすいものです。


慢性的な鼻づまりや、いびき・睡眠中の口呼吸が目立つときは、耳鼻咽喉科の受診もあわせて検討しましょう。歯科と耳鼻咽喉科のどちらか一方だけで判断せず、それぞれの受診先に経過を伝えて並行して進めることで、鼻の通りと口の使い方の両面から無理なく整えていくことができます。


新潟県五泉市で相談する前に準備したい記録と、確認しておきたいこと


新潟県五泉市周辺で歯科医院へ相談する際は、いま使っている保定装置そのものと、これまでの診療記録や経過がわかる資料を持参しましょう。家族で共有した装着時間のメモ、気になる前歯の写真、口の開きや鼻の症状のメモもあると、話がスムーズに進みます。なお、当院はJR磐越西線五泉駅より徒歩3分、駐車場20台完備の環境にあり、習い事や送迎の合間に来院予定を組み立てやすい立地です。


受診したときは、どんな検査をするか、どのくらいの間隔で通うか、家でどれくらい練習するか、費用の内わけを聞いておきましょう。矯正治療は、特別な病気による噛み合わせの異常などを除くと健康保険が使えず、費用は全額自分で払うのが一般的です3。


一般的な目安は次のとおりです。


  • はじめの検査と診断:2万〜6万円ほど
  • I期治療(乳歯と大人の歯がまじる時期):ぜんぶで20万〜50万円ほど。かかるのは1〜3年ほどで、通うのは月1回ほど(12〜36回ほど)
  • II期治療(大人の歯が生えそろってから):ぜんぶで30万〜70万円ほど。かかるのは2〜3年ほどで、通うのは月1回ほど(24〜36回ほど)
  • 調整料:通うたびに3,000〜6,000円ほど
  • 保定期間:1〜2年ほど。そのあいだは3〜6ヵ月に1回ほど通います4

これらは一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用や期間・回数は医療機関やお口の状態により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。


矯正治療には、一般的なリスク・副作用もあります。装置を着けたあとしばらくは違和感や痛みが出ることがありますが、多くは数日〜1、2週間ほどで慣れていきます5。ほかにも、噛みにくさ、口内炎、装置のまわりのむし歯や歯ぐきの炎症、歯根吸収、治療後の後戻り、顎の成長の見通しとのずれによる方針の見直しなどが起こることがあります。


こうした点をあらかじめ知っておき、お子さん本人と保護者の方が納得してから進めることが大切です。


よくある質問


Q. 小児矯正で後戻りが起きると、これまでの治療は無駄になるって本当ですか?


A. これまでの治療がすべて無駄になるわけではありません。成長期に行うI期治療で顎の幅を広げたり上下のバランスを整えたりした効果は、状態によっては残っている部分もあり、部分的な変化であれば保定装置の調整や口腔機能の見直しで対応を検討できる場合もあります。まずは現在の歯と骨の状態を歯科医師に確認してもらいましょう。


Q. 歯科矯正治療中や保定期間中の子どもは、どんな食事を食べたらいいですか?


A. 装置を調整したすぐあとで痛むときは、数日のあいだ、おかゆやうどん、煮こんだ料理など噛みやすいものが向いています。ふだんは、取り外し式の装置なら食べるときに外すのが一般的で、前歯でかじり取れる大きさに切った野菜やお肉なども取り入れられます。


固定式の装置(ワイヤーなど)を着けている間は、前歯で硬い物をかじると装置が外れたり壊れたりすることがあります。硬い物やねばりのある物は小さく切ってから奥歯で噛みましょう。どちらの場合も、足の裏が床や踏み台にしっかりつく姿勢でよく噛んで食べることが、お口周りの筋肉や顎の発育を支えることにつながります。


Q. 矯正治療で子どもが一番負担を感じやすい時期はいつですか?


A. 装置を初めて着けたあとの数日間や、毎日の装置の時間・お口のトレーニングを暮らしのリズムに組み込む最初の1ヵ月前後は、違和感や手間にとまどいやすい時期です。ご家族で着けた時間を書きとめたり、できた日をいっしょに確かめたりして、お子さん一人で抱え込まないようにすることが続けやすさにつながります。


Q. 生え替わりや矯正中に一度ぐらついてしまった歯は、元に戻りますか?


A. 矯正の力で動いている途中の歯や、動かした直後の歯は骨の中でまだ落ち着いていないため、少し揺れを感じることがありますが、保定期間を経て骨が安定すれば次第に落ち着いていきます2。ただし、強い力がかかっている場合や歯ぐきの炎症、乳歯から永久歯への生え替わりが原因のこともあるため、揺れが大きいときは自己判断せず歯科医院でご相談ください。


参考文献


1. 矯正歯科 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/index08.html

2. 矯正治療Q&A | Science Tokyo 旧・東京医科歯科大学 https://www.tmd.ac.jp/ort1/q_and_a/

3. 矯正歯科治療について | 公益社団法人 日本矯正歯科学会. https://www.jos.gr.jp/about

4. 矯正歯科外来|専門外来|医局紹介 | 東京医科大学 口腔外科学分野. https://team.tokyo-med.ac.jp/kouku/info/kyousei.html

5. 矯正歯科|診療科|診療科・部門|日本歯科大学附属病院. https://www.tky.ndu.ac.jp/hospital/departments/section/orthodontics.html

6. 研究者詳細 – 楠元 淳也 https://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100007545_ja.html

7. Jedliński M, Grocholewicz K, Mazur M et al. What causes failure of fixed orthodontic retention? – systematic review and meta-analysis of clinical studies. Head & face medicine. 2021. PMID: 34301280. DOI: 10.1186/s13005-021-00281-3


浅井佑介

歯科医師


浅井歯科医院

院長

浅井佑介

▶ 監修者プロフィール

経歴
2002年
新潟県立新津高校卒業
2008年
明海大学歯学部歯学科卒業
明海大学付属明海大学病院 歯科医師臨床研修(〜2009年)
2009年
明海大学歯学部 オーラルリハビリテーション学分野入局 PDI診療センター勤務(〜2013年)
2013年
新潟大学大学院医歯学総合研究科 組織再建口腔外科学分野入局(〜2017年)
2015年
富山県立中央病院歯科・口腔外科勤務(〜2016年)
2017年
新潟大学大学院医歯学総合研究科修了(歯学博士学位取得)浅井歯科医院勤務
資格・所属学会
2010年
(4月1日)日本顎咬合学会入会
2010年
(6月23日)日本口腔インプラント学会入会