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お口の豆知識 TRIVIA

子どものお口ポカンを放置すると歯並びはどうなる?原因と対策

子どものお口ポカンを放置すると歯並びはどうなる?原因と対策

テレビを見ているとき、お子さんの口は開いていませんか?


お絵描きやテレビに夢中なとき、ふと見るとお子さんの口がぽかんと開いている。「いつか自然に閉じるのかな」と気になる保護者の方は少なくありません。お口ポカンは単なる癖ではなく、口周りの筋力や呼吸の使い方が関わっている場合があります。 歯並びとの関わりや原因、家庭でできる見極めとトレーニング、相談の目安を整理しました。


この記事の要点まとめ


  • お口ポカンは唇や舌の力の使い方に関わり、歯並びや噛み合わせに影響する場合があります。
  • 原因には筋力不足や鼻づまりなどがあり、家庭での観察とトレーニングが手がかりになります。
  • 6歳前後は相談の目安の一つで、専門的な評価やMFT・小児矯正などの選択肢があります。

お口ポカン(口呼吸)を放置するとどうなる?歯並びや成長への悪影響


お口ポカンとは、力を抜いているときに唇が閉じず、口が開いたままになっている状態のこと。多くは、鼻ではなく口で息をする習慣(口呼吸)とセットで見られます。


出っ歯・開咬(前歯が噛み合わない)など歯並びが乱れる仕組み


歯は、外側から押す唇や頬の力と、内側から押す舌の力がつり合った位置に並んでいくと考えられています。口が開いたままだと、前歯を外側から押さえる唇の力が働きにくくなります。すると前歯が前方へ傾きやすく、いわゆる出っ歯の傾向につながる場合があるのです。


そこに舌を前へ押し出す癖が重なると、上下の前歯の間に隙間が残る開咬(かいこう)が見られるケースもあります。奥歯だけで噛む形になれば前歯で食べ物を噛み切りにくくなり、発音のしにくさとして表れることも。顎の幅が十分に育たない場合は、歯が並ぶスペースが不足し、叢生(乱ぐい歯)につながる可能性も指摘されています3


乾燥によるむし歯・口臭リスクの増加と面長な顔立ちへの影響


口が開いていると唾液が蒸発し、口の中が乾きやすくなります。唾液には汚れを流す働きや、酸で溶けかけた歯の表面の再石灰化を助ける働きがあるため、乾燥が続けばむし歯や歯ぐきのトラブル、口臭が起こりやすい環境になりがちです2


また口呼吸では、頭を前に出して顎を上げた姿勢を取りやすくなります。この姿勢が長く続くと顎の成長方向にも関わり、面長な印象の顔立ちにつながると考えられています。姿勢と口の機能は互いに関係し合うもの。当院では姿勢の視点も含めてお口の育ちを見ています。詳しく知りたい方は姿勢とからだの情報サイトもご参照ください。加えて口呼吸はいびきや睡眠の質にも関わり、日中の集中しにくさとして表れる場合もあります1


子どものお口ポカンを引き起こす主な原因と「舌癖」の関連性

子どものお口ポカンを引き起こす主な原因と「舌癖」の関連性

お口ポカンは「だらしないから」ではなく、身体的な背景が隠れている場合がほとんど。原因を切り分けて考えると、家庭で取り組めることと専門的な相談が必要なことが見えてきます。


口唇閉鎖力の不足とアレルギー性鼻炎などの耳鼻科的要因


ひとつは、唇を閉じ続ける筋力(口唇閉鎖力)が育っていないケース。やわらかい食べ物中心の食生活や、噛む回数の少なさが背景にあることもあります。閉じているとすぐ疲れてしまうため、無意識に口が開いてしまうわけです。


もうひとつは鼻づまり。アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻炎、扁桃・アデノイドの肥大などがあると、鼻から十分に空気を取り込めず、やむを得ず口呼吸になります。この場合は歯科だけで完結せず、耳鼻咽喉科での確認が前提になることがあります。 季節によって症状が変わるかどうかも、判断のヒントになります1


歯並びを圧迫する「低舌位(正しい位置に舌がない状態)」とは


舌の本来の定位置は、上顎の前歯のやや後ろにある「スポット」に舌先が触れ、舌全体が上顎に軽く吸い付いている状態とされています。この舌の圧力が、上顎を内側から押し広げる自然な力になっていると考えられています。


ところが口が開いていると、舌は重力で下顎側へ落ち込みます。これが低舌位です。上顎を支える力が減るため歯列の幅が広がりにくく、歯が並ぶスペースが不足しやすくなります。さらに、飲み込むたびに舌を前歯へ押し当てる舌癖(ぜつへき)が加わると、歯に力がかかり続けることに。指しゃぶりが長く続いている場合も同じように前歯へ力が加わるため、卒業の時期を含めて一度ご相談いただくと、無理のない進め方を検討しやすくなります3


ご自宅で取り組むお口ポカンの見極めと改善トレーニング法


まずは「本当に当てはまるのか」を確かめるところから。そのうえで、家庭でできることを無理のない範囲で続けていきます。


我が子の状態を把握する自宅セルフチェック項目


次の項目を、お子さんが何かに集中しているとき(テレビ・読書・お絵描き中)にそっと観察してみてください。


  • 安静時に上下の唇が離れている
  • 食事中にクチャクチャと音が出る、飲み込むときに口が開く
  • 唇が乾いてカサカサしやすい、よく舐めている
  • 寝ているときにいびきをかく、朝に口が渇いていると言う
  • 前歯が乾いて汚れが付きやすい
  • 食事中に猫背になったり、足がぶらついたりしている

当てはまる項目が3つ以上ある場合は、一度専門的な視点で確認しておくと、その後の選択肢を落ち着いて検討しやすくなります。 姿勢の項目を入れているのは、体幹が安定しないと唇や舌も働きにくいためです。


あいうべ体操やスポットトレーニングの実践手順


家庭で取り入れやすい方法をいくつかご紹介します。


  • あいうべ体操:「あー」「いー」「うー」「ベー」と口を大きく動かす体操。舌を思い切り前下方へ出す「ベー」までを1セットとし、1日30セットを目安に、朝晩など時間を決めて行います。
  • スポットトレーニング:舌先を上顎の「スポット」に当て、そのまま数秒キープ。舌の定位置を体に覚えてもらう練習です。
  • 風船・吹き戻し遊び:唇を閉じて息を吐く動きが、口唇閉鎖力への刺激になります。遊びとして取り入れやすいのが利点です。

どれも、続けることが何より大切。カレンダーにシールを貼る、保護者の方も一緒に行うなど、ゲーム感覚の工夫があると習慣になりやすくなります2。ただ、家庭でのトレーニングだけで変化の程度を見極めるのは難しいため、経過を専門家と共有していくことをおすすめします。


歯科医院への相談タイミングと専門的なアプローチ


「様子を見る」か「相談する」かで迷ったときは、成長のタイミングを基準にすると考えやすくなります。


口唇測定機器(りっぷるくん等)を用いた客観的な評価と相談時期


前歯が乳歯から永久歯へ生え変わる6歳前後は、顎の成長と歯列の変化が同時に進む時期。口の機能の変化も観察しやすく、相談の目安のひとつになります3


とはいえ、唇の力が弱いかどうかは見た目だけでは判断しにくいもの。当院ではりっぷるくんという口唇閉鎖力の測定機器を用いて、唇を閉じる力を数値で確認しています。数値化されると現状を把握しやすいだけでなく、トレーニング後の変化を追う目安にもなります。お子さん自身が「前より数字が上がった」と実感でき、続ける動機づけになりやすいのも利点です。あわせて3D口腔内スキャナーや歯科用CTを用い、歯列や顎の状態を立体的に確認することもあります。


MFT(口腔筋機能療法)や小児矯正という選択肢


専門的なアプローチのひとつがMFT(口腔筋機能療法)です。舌・唇・頬の筋肉を、一人ひとりの状態に合わせた手順で訓練していく方法で、家庭での練習内容を歯科医院が定期的に確認しながら進めます。


筋機能へのアプローチだけでは対応が難しい場合には、顎の成長を利用して歯列の土台を整える小児矯正を検討します。取り外し式の装置を使う方法などがあり、開始時期や必要性はお口の状態によって変わります。なお、小児矯正の多くは自由診療にあたるため、費用や期間、通院の見通しを事前に確認しておくことが大切です。 当院の小児歯科では、鼻づまりが疑われる場合の耳鼻咽喉科受診の必要性も含め、お子さんの成長全体を見ながらご提案しています2。判断に迷う段階でも、まずは現状を知るところから始めていただければと思います。


よくある質問


Q1. 口ポカンは歯並びに影響しますか?

A. 唇を閉じる力が働きにくい状態が続くと、前歯が前方へ傾いたり、上下の前歯の間に隙間が残ったりする傾向が指摘されています。ただし影響の程度には個人差があり、必ずそうなるとは限りません。気になる場合は状態の確認をおすすめします。


Q2. お口ポカンに注意が必要な理由は何ですか?

A. 歯並びとの関わりに加え、口の中の乾燥によるむし歯や口臭のリスク、睡眠中のいびき、姿勢への影響など、複数の面に関わる可能性があるためです。単なる癖として片付けず、背景を確認しておくと対応を検討しやすくなります。


Q3. 成長とともに自然に閉じるようになりますか?

A. 鼻の通りが変わることで様子が落ち着いてくるお子さんもいますが、筋力不足や舌の位置の癖が背景にある場合は、意識的な取り組みが必要になることもあります。一定期間観察しても変化が見られないときは、相談の目安と考えていただければと思います。


Q4. トレーニングはどのくらい続ければよいですか?

A. 筋肉の使い方を身につける取り組みですから、数日で変化を判断するのは難しく、月単位で継続していくのが一般的です。定期的に状態を確認しながら進めると、続けるうえでの目安が持ちやすくなります。


Q5. 相談だけでも受けられますか?

A. はい。治療を前提としない状態確認のご相談も承っています。お口の状態や生活習慣を伺ったうえで、ご家庭でできることからご提案いたします。


参考文献


1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/

2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth

3. 日本小児歯科学会 https://www.jspd.gr.jp/


浅井佑介

歯科医師


浅井歯科医院

院長

浅井佑介

▶ 監修者プロフィール

経歴
2002年
新潟県立新津高校卒業
2008年
明海大学歯学部歯学科卒業
明海大学付属明海大学病院 歯科医師臨床研修(〜2009年)
2009年
明海大学歯学部 オーラルリハビリテーション学分野入局 PDI診療センター勤務(〜2013年)
2013年
新潟大学大学院医歯学総合研究科 組織再建口腔外科学分野入局(〜2017年)
2015年
富山県立中央病院歯科・口腔外科勤務(〜2016年)
2017年
新潟大学大学院医歯学総合研究科修了(歯学博士学位取得)浅井歯科医院勤務
資格・所属学会
2010年
(4月1日)日本顎咬合学会入会
2010年
(6月23日)日本口腔インプラント学会入会