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お口の豆知識 TRIVIA

子供の噛む力を家庭の調理で育てるには、食材の選び方と切り方が鍵

子供の噛む力を家庭の調理で育てるには、食材の選び方と切り方が鍵

毎日の食卓で無理なく噛む経験を増やすために


夕方のいそがしい時間に、お肉や青菜を口にためこむお子さんの様子にこまることはありませんか。子どもの噛む力を育てるには、かたい食べ物をあげることよりも、歯の生え方や口の動きに合わせて、切り方や火の通し方を変えることが鍵になります。大人のおかずから無理なく取り分ける手順と、のどに詰まらせないための見守り方、歯科医院へ相談する目安をまとめました。


この記事の要点まとめ


  • 奥歯のはえ方や口の動きに合わせて、かたさや大きさを変えながら、かむことをくり返します。
  • 肉や青菜は繊維を断つように切り、火の通し方も工夫して、家族の料理から取り分けます。
  • 食べ物の形や座る姿勢に気をくばり、食べにくさが続くときは歯科医院で相談します。

子どもの噛む力は「硬さ」より歯の生え方と食べる様子に合わせて育てる


よく噛んで食べる習慣は、唾液の分泌を促し、お口の健康や顎の発育を支える土台となります。ただし、噛む力(咀嚼力)はただ硬い食べ物を与えれば育つわけではなく、現在の歯の生え方や口の動きに合った食形態で「噛みつぶして飲み込めた」という経験を重ねることで少しずつ養われます。


「硬いものほど鍛えられる」「細かく刻めば食べやすい」はどちらも誤解になりやすい


噛む力を育てようとして硬すぎる食材を与えると、奥歯ですりつぶしきれずに口の中へため込んだり、そのまま丸のみしたりする原因になります。反対に、早く食べ終えてほしいからと全ての食材を細かく刻みすぎると、舌と上顎だけで処理できてしまい、奥歯でしっかり噛む機会が減ってしまいます。


家庭の調理で目指したいのは、お子さんが奥歯で数回すりつぶせば無理なく飲み込める硬さとまとまりを作ることです。柔らかい食事ばかりに偏ると咀嚼回数が減りやすいため、少しずつ歯ごたえを調整していく視点が役立ちます。


奥歯の生え方で変わる、噛める食材の目安


前歯には食べ物を「かじり取る」役割があり、奥歯(乳臼歯)には食べ物を「すりつぶす」役割があります。乳歯がすべて生えそろう時期や、一番奥の歯がしっかり噛み合うようになる時期には、同じ年齢のお子さんでも個人差があります。


奥歯の噛み合わせがまだ途中の段階では、繊維の強い野菜や弾力のあるお肉を細かくするのに多くの時間がかかります。年齢や月齢だけで食形態を決めるのではなく、仕上げみがきの際にお子さんの奥歯が上下で噛み合っているかを観察し、食材の硬さや大きさを選ぶ目安にしてみてください。


口にためる・丸のみする・食べるのが遅いときに見直したい原因


食事中に口が止まったり飲み込めなかったりするときは、しつけや好き嫌いの問題と捉える前に、口の働きと食材の相性から原因を切り分けてみましょう。


食卓で見られる様子考えられる食材・一口量の要因関わりやすいお口の動き
口にため込んで動かない肉の弾力や野菜の繊維が噛み切れない奥歯ですりつぶす力や、舌で食べ物を喉へ送る動きが発達の途中
あまり噛まずに丸のみする一口が大きすぎる、または刻みすぎて柔らかい前歯でかじり取る経験や舌でまとめる動きの不足
食べるのが遅い・飲み込めない水分が少なくパサついている、量が多い唇を閉じて噛む力や呼吸との切り替えの難しさ

このように、食べる速さや飲み込みにくさの背景には、調理の形態だけでなく唇や舌の動かし方が関わっているケースもあります。


ポイント

硬すぎる食材や細かすぎる刻み方は避け、奥歯の生え方や口の動きに合わせて「すりつぶせば飲み込める形」に整えることが噛む経験を育てます。


大人のおかずから取り分ける、食材別の切り方と加熱の工夫

大人のおかずから取り分ける、食材別の切り方と加熱の工夫

かむ力を育てるために、大人とは別のとくべつな食事を毎日つくる必要はありません。家族と同じおかずを作るとちゅうで、お子さんの分だけ「繊維の切り方」と「火を通す時間」を少し変えると、かみごたえを少しずつ変えられます。


薄切り肉・鶏肉は繊維を断つ切り方と下ごしらえで噛み切りやすくする


豚や牛の薄切り肉は、火を通すと縮んでかたくなり、子どもの乳歯ではかみ切りにくい食べ物のひとつです。料理の前に包丁の先で筋を切り、肉の繊維の流れとまっすぐ交わるように包丁を入れ、お子さんの食べる力に合った小さめの大きさに切り分けると、奥歯でほぐれやすくなります。


さらに、焼く・炒める前に少量の片栗粉をまぶしておくと、肉汁が閉じ込められてパサつきが抑えられ、口の中でまとまりやすくなります。鶏肉は皮を取り除いて繊維を断つようにそぎ切りにし、ひき肉を使う際は豆腐や片栗粉などのつなぎを加えて適度なまとまりを持たせると、口の中でバラバラにならず飲み込みやすくなります。


葉物・根菜は繊維の向きと加熱時間で歯ごたえを段階的に調整する


ほうれん草や小松菜などの葉物野菜は、茎の繊維が口に残りやすいため、繊維を断つ方向で、お子さんの食べる力に合わせた短めの長さに切ります。鍋に入れる際は茎の部分を先に入れてやわらかくゆで、時間差で葉を加えると、全体が食べやすい硬さにそろいます。


にんじんや大根などの根菜類は、最初から硬い状態で出すのではなく、まずは大人用より少し長く加熱して奥歯で軽くつぶせる硬さから始めます。慣れてきたら加熱時間を少しずつ短くしたり、繊維に沿ったスティック状に切って「前歯でかじり取る」練習を取り入れたりすると、無理なく歯ごたえに慣れていけます。


魚・豆腐・うどんなど柔らかい食材は組み合わせで噛む回数を増やす


うどんや豆腐、白身魚などは、大きさや煮かげんによってはあまり噛まずに飲み込めてしまい、早く食べ終わりやすい食材です。これらもお子さんの食べる力に合った大きさや硬さに整えることが大切です。夕方の忙しい日に活用すること自体は悪いことではありませんが、単品で出すと咀嚼回数が減りやすくなります。


柔らかいメニューの日には、うどんに少し歯ごたえを残した根菜やわかめを合わせる、豆腐のハンバーグに細かく切ったきのこやれんこんを混ぜるなど、一皿の中に「噛む要素」をプラスする工夫が向いています。加える具材の硬さや大きさは、その子が噛んで飲み込める状態に合わせて選んでください。魚は骨や皮を取り除き、食べる力に合わせた大きさのほぐし身にすると、口の中で舌を使ってまとめる練習になります。


忙しい夕食作りに組み込む、取り分けのタイミングと一口大の決め方


平日の夕食作りで手間を減らすには、大人用の味付けをする前、または煮込みの途中でお子さんの分を取り出す手順を決めておくとスムーズです。たとえば炒め物なら、具材に火が通った段階で子どもの分を小皿に取り出し、キッチンばさみで繊維を断つように切ってから薄味で仕上げます。


一口の大きさは、奥歯ですりつぶす練習なら「お子さんの親指の爪くらい」、前歯でかじり取る練習なら「手で持って前歯に当てられる長さ」というように、その日の目的に合わせて使い分けてみてください。


ポイント

大人のおかずから取り分ける際は、肉や葉物の「繊維を断つ切り方」と「加熱時間の調整」を組み合わせ、柔らかい料理には歯ごたえのある具材を添えて噛む機会を作ります。


窒息を防ぐ見守り方と、歯科医院に相談する目安を家族で共有する


祖父母に食事をお願いする日があるご家庭では、「硬いものを食べて顎を鍛える」という昔ながらの考え方と、窒息を防ぐための配慮を事前にすり合わせておくことが大切です。誰が食卓を見守る場合でも同じ対応ができるよう、食材の扱いと食事環境のポイントを共有しておきましょう。


丸い・弾力がある・硬い食品は切り方と与え方を家族でそろえる


子どもの気道は狭く、奥歯ですりつぶす力や飲み込むタイミングが未熟な時期は、特定の形状の食品が喉に詰まりやすいとされています。家族全員で以下の扱いを統一しておくと、食事中のヒヤリとする場面を減らせます。


  • 丸くてつるつるした食品(ミニトマト・ぶどう・うずらの卵など):そのまま与えず、縦に細かく切って丸い形をなくす
  • お餅:小さく切っても喉にはりつきやすいため、幼児期は与えるのを控える
  • 弾力が強い食品(こんにゃく・いか・たこなど):小さくしても噛み切れずに丸のみしやすいため、奥歯ですりつぶせるようになるまでは避ける
  • 硬くて小さい食品(炒り豆・ナッツ類など):喉や気管に詰まりやすいため、幼児のうちは食べさせない。硬いせんべいも噛み砕けるかを見て判断する

「よく噛むおやつ」を選ぶ際も、硬い豆類などに頼るのではなく、前歯でかじり取って唾液と混ぜながら柔らかくできる食品を選びます。ただし生のりんごや粘りのある干し芋も喉に詰まることがあるため、小さい時期はりんごを加熱してやわらかくする、干し芋を細く短く切るなど形を整えます。噛み切れない様子があれば、与えるのを控えてください。


一口の量・座る姿勢・椅子・食事時間まで整える見守り方


噛む力を引き出すには、食べ物の中身だけでなく、食べる姿勢や椅子の高さも関わります。座ったときに足の裏を床や足置きで支えると姿勢が安定し、噛みやすくなることがあります。踏み台やクッションを使って足裏が着く環境を整え、少し前かがみになれる姿勢を作りましょう。


また、口の中に食べ物があるうちに次の一口を入れると丸のみにつながります。「ごっくんしてから次を入れようね」と声をかけ、水やお茶で流し込まないよう見守ります。噛む回数を無理に数えさせると食事が緊張の場になりやすいため、テレビを消して食事時間の目安を家族で決め、楽しく味わう雰囲気を大切にしてください。


工夫を続けても噛みにくさが続くときの相談目安と伝えておきたいこと


切り方や姿勢の工夫をしばらく続けても次のような様子が見られる場合は、調理の問題だけでなく、お口の機能の発達が関係している可能性があります。食事中によくむせる、飲み込めずに苦しそうにするなど様子が強いときは、待たずに早めに相談してください。


  • 食事のたびにとても時間がかかり、口にため込む時間が長い
  • 噛んでいるときにクチャクチャと音がする、食べこぼしが多い
  • 普段から口がぽかんと開いている、または飲み込むときに舌が前に出る

歯医者さんでは、むし歯のチェックだけでなく、歯の数やかみ合わせ、くちびるを閉じる力、舌の動きをみます。おっぱいやミルク、離乳食の進め方、食べるときの姿勢、食育のことまで広く相談できます。お子さんの様子や、しらべる内容・指導の内容によっては、健康保険が使える場合があります。


一方、マウスピース型の装置とお口のトレーニングを組み合わせる小児の矯正は、自由診療になることが多いです。期間や通院の回数、費用は、装置の種類やお子さんの状態によって大きく変わります。当院の小児予防矯正(プレオルソ)は495,000円で、トレーニング代として別に毎月4,400円かかります。


なお、装置をつけたときの違和感や痛み、口内炎が出ることがあります。毎日つける時間やトレーニングの続け方によって、結果には個人差があります。


受診の際は、家庭で食べにくそうにしていた食材や、食事中の姿勢・時間をメモして持参すると、お子さんの成長段階に合った具体的な進め方を相談しやすくなります。


よくある質問


Q. 子どもが噛む力を育てるレシピにはどのようなものがありますか?


A. 特別なレシピを用意しなくても、普段の豚汁や野菜炒め、筑前煮などの家庭料理で十分に噛む力を育てられます。大人のおかずから取り分ける際に、お肉の繊維を断つように切る、根菜の加熱時間を調整して「奥歯でつぶせる硬さ」にするといった工夫ができます。柔らかい豆腐やうどんの日にはきのこや海藻を混ぜるなど、調理の工夫がそのまま練習になります。


Q. 子どもがよく噛むようになる食材やおやつは何ですか?


A. ただ硬いものではなく、前歯でかじり取る動きや、噛むほどに唾液と混ざってまとまる食材が向いています。食事では繊維を断って調理した肉類や、スティック状にゆでたにんじん・大根などの根菜類、おやつではりんごや干し芋、小魚などが取り入れやすい食材です。ただし年齢や食べる力によっては喉に詰まる原因になるため、小さい時期はりんごを加熱する、干し芋を細く短く切るなど形を整え、噛み切れないものは避けてください。


Q. お肉を口にためて飲み込めないときは、細かく刻んだほうがよいですか?


A. みじん切りのように細かく刻みすぎると、かえって口の中でバラバラになり、まとまらずに飲み込みにくくなることがあります。お肉は繊維に対して垂直に包丁を入れてお子さんの食べる力に合った大きさに切り、片栗粉をまぶして加熱するなど、しっとりとして奥歯でほぐれやすい状態に整える方法がおすすめです。


Q. 食べ方の悩みだけで歯科医院を受診してもよいのでしょうか?


A. むし歯や痛みがなくても、食べるのが遅い、口にためる、丸のみする、普段から口がぽかんと開いているといった食べ方や口元の相談で歯科医院を受診して差し支えありません。奥歯の噛み合わせや唇・舌の動きを確認することで、ご家庭での食形態の選び方や姿勢の整え方が分かりやすくなります。


浅井佑介

歯科医師


浅井歯科医院

院長

浅井佑介

▶ 監修者プロフィール

経歴
2002年
新潟県立新津高校卒業
2008年
明海大学歯学部歯学科卒業
明海大学付属明海大学病院 歯科医師臨床研修(〜2009年)
2009年
明海大学歯学部 オーラルリハビリテーション学分野入局 PDI診療センター勤務(〜2013年)
2013年
新潟大学大学院医歯学総合研究科 組織再建口腔外科学分野入局(〜2017年)
2015年
富山県立中央病院歯科・口腔外科勤務(〜2016年)
2017年
新潟大学大学院医歯学総合研究科修了(歯学博士学位取得)浅井歯科医院勤務
資格・所属学会
2010年
(4月1日)日本顎咬合学会入会
2010年
(6月23日)日本口腔インプラント学会入会