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お口の豆知識 TRIVIA

噛めない・噛み切れない子どもへの対策とは?噛む力を鍛える方法

 


近年、「子どもが食べ物を噛めない」「前歯で噛み切れない」といった相談が増えています。噛む力の不足は栄養摂取の偏りだけでなく、歯並びや顎の成長にも影響を及ぼすことがあります。


その背景には歯の生え揃いの遅れや噛み合わせの異常、口周りの筋力不足などが関係しています。本コラムでは、子どもが噛めない原因や考えられる病態、そして浅井歯科医院で行っている噛む力を鍛える方法についてわかりやすく解説します。


■子どもが食べ物を噛めない・噛み切れない原因


◎歯の本数が足りない

乳歯や永久歯の生え変わり時期には、まだ歯の本数が揃わず、噛む力が十分に発揮できないことがあります。特に前歯が生え揃っていないと、食べ物を噛み切るのが難しくなります。奥歯も噛む力に重要な役割を果たしているため、歯の生え揃いの状態を定期的に確認することが大切です。


◎噛み合わせの異常

噛み合わせにずれがあると、食べ物をしっかり噛み砕けません。例えば、上顎前突(出っ歯)や反対咬合(受け口)、開咬(前歯が閉じない状態)などは、前歯で噛み切れない原因となります。


こうした噛み合わせの異常は歯並びだけでなく顎の発育にも関係するため、早期に歯科でチェックを受けることが重要です。


◎舌やお口周りの筋力不足

柔らかい食事が多い現代の食生活では、舌や頬、唇の筋肉が十分に鍛えられないことがあります。これにより食べ物を口の中で効率よく動かせず、結果として噛めない・飲み込みにくいといった症状が出やすくなります。

口呼吸の癖や姿勢の悪さも、筋力低下や噛み合わせへの悪影響につながります。


■子どもが噛めないのは口腔機能発達不全症?


子どもが噛めない・噛み切れない背景には、「口腔機能発達不全症」という病態が隠れていることがあります。これは、噛む・飲み込む・発音するなどの機能が十分に育っていない状態を指し、2018年に保険病名として導入されました。


口腔機能発達不全症のサインには以下のようなものがあります。


  • 前歯で食べ物を噛み切れない
  • 噛む回数が極端に少ない
  • 舌の動きが悪く、飲み込みがスムーズでない
  • 常に口がポカンと開いている

「大人になれば治るだろう」とこの状態を放置すると、噛み合わせや歯並びの乱れ、将来的な顎の成長不足につながる可能性があります。さらに、十分に噛めないことで栄養バランスが崩れ、全身の健康にも影響が及ぶことも。早期発見と適切な対応が求められます。


■子どもの噛む力を育てる方法は?


浅井歯科医院では、お子さん一人ひとりの口腔機能を詳細に確認し、発達段階に応じた対策を行っています。単に「噛む力を鍛える」という表面的な指導ではなく、さまざまな観点から評価し、必要に応じて多角的にアプローチします。


以下に代表的な取り組みを医学的知識を交えてご紹介します。


◎MFT(口腔筋機能療法)

MFTは、舌・口唇・頬筋などの協調運動を改善し、嚥下や発音、咀嚼機能を整えるためのプログラムです。


例えば、舌を安静時に正しい位置に置く訓練は、舌圧を高めるだけでなく、歯列を外側から支える頬圧とのバランスを整え、歯並びや噛み合わせの安定に寄与します。


また、唇をしっかり閉じる訓練は口呼吸の改善につながり、口腔乾燥やむし歯の予防にも効果を発揮します。将来的に矯正治療を行う場合でも、MFTを併用することで治療後の後戻りリスクを減らすことができるといわれています。


◎姿勢の改善

咀嚼機能は、口腔内だけでなく全身の姿勢と密接に関係しています。猫背や骨盤の後傾により頭の位置が前方へずれると、下顎の位置が変化し、噛み合わせのズレや顎関節への負担が増える可能性があります。


また、足が床につかない姿勢では咀嚼筋群が十分に働かず、噛む力が低下してしまうことがあります。そのため当院では、椅子や机の高さを調整し、体幹の安定を保った状態で咀嚼できるよう指導しています。


これは単に噛む力を強くするだけでなく、顎の成長発育を正しい方向へ導くうえでも重要です。


◎食育指導

食材の硬さや形状は、咀嚼運動の発達に大きく関わります。


例えば、繊維質の野菜や弾力のある肉類を適切に取り入れることで、咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内外翼突筋)がバランスよく鍛えられます。また、咀嚼の刺激は顎骨の成長や歯の生え方にも影響を与えるため、食事の工夫は栄養補給のほかにも意味を持つのです。


当院では、年齢別の咀嚼能力や歯の生え具合に応じて、保護者の方へ具体的な食材の選び方や調理方法を提案しています。


◎定期的な歯科検診

「噛めない」「噛みにくい」背景には、むし歯によって歯の高さが変わり噛み合わせが悪くなっていたり、歯が一部分だけ早く当たってしまう、歯並びの乱れなどが潜んでいることがあります。


特に乳歯のむし歯や早く抜けてしまうことは、永久歯の萌出や歯並びに影響を及ぼすこともあります。


また、口腔機能発達不全症が疑われる場合には、歯科医師による咬合診査や筋機能評価を通じて、必要に応じて矯正治療や専門的トレーニングを提案します。定期的な検診は、噛み合わせや顎の成長を早期に把握し、適切な治療を行うための基盤となります。


■まとめ


子どもが食べ物を噛めない・噛み切れないのは、単なる癖ではなく歯の本数や噛み合わせ、口腔機能の未発達が関係していることがあります。口腔機能発達不全症が疑われる場合には、早めの歯科受診が大切です。


浅井歯科医院ではMFTや姿勢改善、食育指導を通じて噛む力の発達をサポートしています。お子さんの噛み合わせや歯並びに不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

浅井歯科医院
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